タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
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<同市では今年度の健診を、全14小中学校で、男女ともに上半身裸で実施した。これに反対する保護者らが10月、「子どもたちの安心できる健康診断をめざす会」を設立。市や市教委に着衣での健診を求め、署名活動を始めた>(11月13日配信・毎日新聞)。京都府長岡京市の小中学校では、全員上半身裸で健診を実施。学校の健診で下着の着用を認めるかどうかは統一したルールがなく、下着の着用を認める学校、衝立(ついたて)で他人に見えないようにする学校、そうした対処をしない学校など、バラバラなのが実情だそうです。私が小学生だった頃から40年経った今でも、しかも思春期以降の年齢でも裸で行っている学校があると知って、非常に驚きました。憤(いきどお)りを感じます。
学校健診が嫌だという子どもたちもおり、医師による盗撮事件などで不安を感じる保護者もいると記事にはあります。脊柱側彎(せきちゅうそくわん)症を見落とさないためには上半身裸で行うことが必要だという地方医師会の見解もある一方、東京都では市民の声を受けて今年3月に「胸を見せる内科検診を拒否してもいい」と児童生徒に周知することを求める陳情が都議会で採択されたそうです。「将来的には学校健診は強制ではなく、各自でかかりつけ医に受ける形に変えていくべきでは」と指摘する専門家も。他人に体を見られたくない子どもも多いはず。子どもの人権尊重の観点から、現行の制度を見直すべきでしょう。
私自身、小学校高学年の学校健診で男性教諭の目の前で上半身裸にされたことが深い傷になっています。教師はニヤニヤしながら女子児童たちの体を眺めて「小島は生意気なことを言っているけど胸はぺったんこだな」と発言。当時はそれが性暴力であるという認識は児童たちにもなく、私はその後ずっとトラウマに苦しみました。学校での子どもの安全・安心がもっと重視されることを望みます。
◎小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。寄付サイト「ひとりじゃないよPJ」呼びかけ人。
※AERA 2022年11月28日号