ひと昔前は、妻を「家内」、夫を「旦那」と呼び、パートナーに呼びかけるときは「あなた」や「お父さん」、「おまえ」や「母さん」が一般的だった。昭和、平成を経て令和の現在、夫婦の呼び方は、どのように変化しているのだろうか。直近の統計を紹介しつつ、名前の呼び方に表れる現代の夫婦関係について考えた。
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飲食関係の仕事に就く男性(39歳)は、子どもが3歳のときに妻に言われたことをときどき思い出す。ある日、家族で近所のスーパーへ。子どもも一緒にいたため、少し離れた売り場にいた妻を呼ぶときに「ママ―!」と言った。妻は表情を変えずに「はいはい」とこちらにやってきたが、男性の顔をみると低い声で不機嫌そうにこういった。
「ママだけど、あんたのママじゃないから」
それ以降、妻をママと呼んではいけない、名前で呼ぼうと男性は肝に銘じたという。
同級生と結婚した事務職の女性(33歳)も「夫からママと呼ばれたらピンとこない」という。
「夫が同級生だったため、学生時代から一貫して名前呼び。子どもが生まれてからも変わらず、他人に話すときの呼び方も名前です」(女性)
時間が経つと、相手の呼び方が変わるかというと、そうでもないようだ。電機関係の企業に勤める男性(51歳)は、結婚前の呼び方のまま20年が過ぎた。
「結婚前から名前に『ちゃん』『くん』づけで呼び合っている。20年以上経ったいまも変わらない。友人に話すときは名前で、それ以外の人には『妻』。妻も自分の友人には名前で、職場の人間に対しては『夫』呼びをしている」(男性)
現代の夫婦間では、配偶者に対し、お父さん、お母さん、パパ、ママと家族の中での役割で呼んだり、呼ばれたりするのは抵抗感や違和感があり、名前で呼び合うのが「普通」なのかもしれない。
この10年で変化した夫婦の呼び名
リクルートブライダル総研では、2011年より隔年で「夫婦関係調査」を実施。今回(夫婦関係調査2021)は「夫婦の呼び方」にも着目した。同総研研究員の金井良子さんによると、10年前とは集計方法が異なるので参考値ではあるものの、興味深い変化が見てとれるという。