AERA 2021年9月27日号より
AERA 2021年9月27日号より

■デメリットにも注意

 さらに、いかにも日本のスマホ証券らしい取り組みがある。

「LINE証券ならLINEポイント、SBIネオモバイル証券ならTポイントで投資することも可能です。初心者の場合は、少額であっても身銭を失うことには抵抗を感じるかもしれません。しかし、日常生活でたまったポイントなら、万一、投資で失敗しても諦めがつくのではないでしょうか」(同)

 もちろん、スマホ証券もいいことずくめではない。難点の一つは、NISA(少額投資非課税制度)に対応していないケースが多いことだ。投資で得た利益からは原則約20%の税金が徴収される。しかし、NISAを利用すれば、毎年一定額までは税金がかからない。初心者にとってのメリットとして挙げた「投資対象の絞り込み」も、キャリアを重ねるうちにデメリットともなる。自分自身で取捨選択ができるようになり、さらに幅広く投資したいと思った場合に選択肢が見劣りしがちなのだ。

 また、米スマホ証券「ロビンフッド」では一獲千金を狙ってリスクの高い投資を繰り返し、多額の損失を出す例もあった。とはいえ、スマホ証券には大いに存在意義があると、高山氏は捉えている。

「初心者にとって最も重要なのは、まずは投資に慣れること。実際に始めて自分自身で経験することが大事です。私が相談を受けたとある女性のお客様も、当初はリスクを極端に嫌っていました。でも、スマホ証券で投資の楽しさに目覚め、今は株主優待を目当てに1単元になるまでせっせと買い集めています」

(金融ジャーナリスト・大西洋平)

AERA 2021年9月27日号より抜粋

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大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

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