新型コロナウイルスの感染者が全国的に減少傾向にある今、政府は経済活動の再開に向けて「ワクチン・検査パッケージ」の導入や「Go Toトラベル」の再開を検討し始めている。AERA 2021年10月11日号では、政府から依頼を受けて、ワクチン接種後の生活をシミュレーションした古瀬祐気・京大准教授に聞いた。
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──9月末、27都道府県の緊急事態宣言やまん延防止等重点措置がすべて解除された。政府の基本的対処方針分科会は「感染対策と日常生活を両立させることを基本として、政策を展開していく」とした。10月から、ワクチン接種証明と検査の陰性証明を組み合わせた「ワクチン・検査パッケージ」の技術実証が始まる。外食産業や旅行業界では、接種者に特典や限定プランを提供する動きが広がっている。
ワクチン・検査パッケージは、分科会が出口戦略の考え方を提示した際に紹介した一つの選択肢ですが、分科会の中でも賛否両論があります。経済の活性化が喫緊に必要だからすぐにでも積極的に導入するべきだと考える人もいれば、デルタ株の感染性やワクチンの効果が低下していく影響を考慮し、導入時期は慎重に検討するべきだと考える人もいます。私は後者に近い考え方です。いずれにせよ、本格導入は希望者全員がワクチン接種を終えてからで早くても11月か12月。その前に個別の企業や店舗で試験的に実施し、検証するのはいいことだと思います。
■どう折り合いつけるか
ただし、ワクチン・検査パッケージを導入しても、相対的には感染は起こりにくい状態にはなりますが、絶対に感染が起きない保証にはなりません。デルタ株ではワクチンを接種していても感染することはある。多くの場合は無症状や軽症で済みますが、無症状でも他の人に感染させます。また、検査で陰性でも、潜伏期間中の可能性は否定できず、100%感染していないわけではありません。
──自民党の新総裁に就任した岸田文雄氏は、観光支援策「Go Toトラベル」の再開も検討するとしている。一方、専門家からは「一気に対策を緩めると、これから寒い季節が来る中で、第6波が到来する恐れがある」と懸念の声が上がる。
Go Toを実施して感染がすごく拡大するかどうかはわかりませんが、実施しなければ、実施するよりも感染は少なくてすみます。とはいえ、経済の活性化も必要と思いますので、現実的には実施の仕方など、どう折り合いをつけるのかが重要になってくると思います。