(写真提供/空気階段)
(写真提供/空気階段)

 10月2日に行われたコントの大会『キングオブコント2021』は例年以上の盛り上がりを見せた。過去最多の3015組の出場者の中から、厳しい予選を勝ち抜いた10組のファイナリストが、ハイレベルなネタを次から次へと披露して、会場を爆笑の渦に巻き込んだ。

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 今年の大会では即席ユニットでの参加が可能になり、審査員の顔ぶれも入れ替わり、オープニング映像も一新された。それらのリニューアルも功を奏して「史上最高の大会」と評された。


 そんな中で見事に優勝を果たしたのは、前年3位で優勝候補の一角に位置していた空気階段だった。鈴木もぐらと水川かたまりの2人から成る空気階段は、吉本興業所属のお笑いコンビである。2012年にコンビを結成して以来、コントを専門にしてライブ中心の活動を続けてきた。

 渋谷にある吉本興業の劇場「ヨシモト∞ホール」を拠点にしていたが、最初のうちは全く芽が出なかった。外見も芸風も地味な彼らのネタは、若い女性中心の客層には刺さらなかった。しかも、彼らがデビューした当時はテレビでもネタ番組がほとんどなく、無名の若手芸人がメディアに出る機会はほとんどなかった。

 それでも、八方塞がりの状況でネタを磨き続けているうちに、数少ないチャンスを着実にものにしていった。2016年と2017年には『マイナビ Laughter Night』でグランドチャンピオンに輝き、2017年にはラジオ番組『空気階段の踊り場』(TBSラジオ)が始まった。 

 さらに、『有吉のお饅頭が貰える演芸会』『朝まであらびき団SP あら1グランプリ2018』などにも出演して、コントの面白さが徐々に多くの人に広まり始めた。

 それと並行して、多額の借金を抱え、ギャンブルに溺れ、遅刻を繰り返すもぐらが「クズ芸人」として注目されるようになり、多くのバラエティ番組に出演した。

『空気階段の踊り場』が始まった当初はテレビの仕事もほとんどなく、もぐらは生活のために夜の店でアルバイトを続けていた。売れない芸人として地道に生きていた彼らは、ラジオでもその等身大の日常を語るしかなかった。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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