ミッツ・マングローブ
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 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「嵐の結婚タイミング」について。

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 20年近く前になりますが、当時トップアイドルだった女優と国民的人気力士が電撃婚約→2ヶ月で婚約解消という出来事がありました。人気絶頂のアイドル女優とアイドル力士による空前のすったもんだに、連日ワイドショーや週刊誌も大わらわ。特に破談が濃厚となって以降の騒然さは凄まじく、どんなニュースをもってしても収まる気配なしだったことを憶えています。しかし、そこへ突如飛び込んできたのが「皇太子殿下(現在の天皇陛下)ご婚約内定」の報(しらせ)であり、日本中の関心は一夜にして「アイドル女優」から「小和田雅子さん」へとシフトしたのです。それはそれは見事な「変心劇」でした。

 このように、ニュースというのは常に「勝ち抜き戦」です。2020年の春以降はずっと「コロナ」が勝ち抜いてきました。ワイドショーで費やされた時間で換算すれば、99年の「ミッチーVSサッチー騒動」以来の超ロングヒット・トピックと言えるでしょう。事の性質と深刻さが違い過ぎますが。そしてもうひとつ、ここ数年を代表するロングセラーと言えば「小室圭騒動」です。私の古いパソコンは「こむろけい」と打つと、今でも健気に「小室系」と変換し、その度に切ない気持ちにさせられます。

 さて、今週はなんと言っても小室圭さん本人が2年ぶりの帰国を果たしたということで、久しぶりにマスコミ総動員による「無礼講&無節操」なお祭り騒ぎでした。まるで「コロナ」などなかったかのように、自宅に到着した小室氏に向かって「今のお気持ちはー?」と叫ぶ報道陣。まさに今から自主隔離に入らんとする人が、公衆の面前で応答するとでも思っているのでしょうか?

 さらに今週は自民党総裁選という、国の未来を占う一大事もありました。現状の国難を思えば、それこそ「小室さんどころではない!」となってもおかしくないはずですが、小室圭ビクともせず。コロナにも次期総理にも霞まない小室圭の存在とはいったい。そもそも一連の小室圭騒動の8割が「噂と推測」であるのを考えると、「事実は小説より奇なり」なんて諺も陳腐でしかありません。所詮、人間は「好き勝手な妄想を膨らませて、他人の陰口を叩く」こと以上に楽しみを見出せない生き物なのです。

 そして、揺るがない小室圭を前に、絶妙なタイミングで「櫻井翔・相葉雅紀ダブル結婚」の一報が立ちはだかりました。言わずもがな天下の嵐です。国民的アイドルの意地ってもんがあります。どさくさ紛れになんてされてたまるものですか。嵐ファンの皆さん、今こそ歌う時でしょう。♪譲れないよ 誰も邪魔できない♪

 しかしながら結果は小室圭の圧勝。ポジティブな話題だと、人の食指がさほど動かないとは言うものの、とりわけ彼らの結婚はひたすらポジティブだった。ケチを付ける要素はおろか、過剰な祝福ムードに転換できるほど情報量もなく、ファンの「ロス感情」を煽るような膨らみ方もせず、淡々とその事実だけが世の中に伝播していきました。嵐の如才無さには毎度感心させられてきましたが、今回もまた「さすが」の一言です。嵐なのに余計な波風を立てない。もちろんそれが彼らの狙いだったわけですが。にしても、やはり「皇室ネタ」は強い。ネタの粘着性も最強なわけで。

 それはそうと、小室氏のロン毛を指して「ニューヨーク風」とか、日本人はいつまでそんな田舎者的発想に基づいて生きていくつもりなのでしょうか。

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

週刊朝日  2021年10月15日号

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ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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