経済学者で同志社大学大学院教授の浜矩子さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、経済学的視点で切り込みます。
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岸田文雄内閣が発足した。「アホノミクス」と「スカノミクス」を罵倒しまくってきた筆者は、岸田氏の経済運営を「何ノミクス」と命名してアタックにかかるべきなのか。
まだ所信表明演説も行われていない段階なので、ネーミングはやや時期尚早だ。とはいえ、善は急げ。ひとまず暫定的な名称を考えた。「アホダノミクス」である。
岸田氏は「新自由主義からの転換」とか「新しい資本主義の構築」などと言っている。「新資本主義実現会議」の創設も打ち出した。アホともスカとも違う岸田流の打ち出しに必死だ。
だが、その実、言葉の薄皮を一枚むけば、アホノミクス的アンコが顔を出す。岸田氏は「成長と分配の好循環」を目指すのだと主張する。そこに「新自由主義からの転換」の要があると言いたげだ。しかし、この言い方は、アホノミクスの大将が、2016年1月の施政方針演説の時から使い始めたものだ。