中北浩爾(なかきた・こうじ)/一橋大学大学院社会学研究科教授。専門は日本政治史、現代日本政治論。著書に『自民党─「一強」の実像』(中公新書)など(c)朝日新聞社
中北浩爾(なかきた・こうじ)/一橋大学大学院社会学研究科教授。専門は日本政治史、現代日本政治論。著書に『自民党─「一強」の実像』(中公新書)など(c)朝日新聞社
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 岸田文雄首相率いる「自民党」か、枝野幸男代表率いる「立憲民主党」か。解散総選挙は「政権選択」の選挙だ。与野党の政策で注目すべき点は何か。AERA 2021年10月25日号は、中北浩爾・一橋大大学院教授に聞いた。

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 岸田さんの主眼は「内向きの安定」です。改革をアピールして無党派層の支持を得るというより、党内の安定や旧来の支持者を優先する守りの姿勢が目立ちました。総裁選で打ち出した金融所得課税の強化も、経済界に配慮して一気にトーンダウンした。

 与野党の対立軸は明確です。経済でいえば「成長も分配も」の自民党なのか、「成長より分配」の野党なのか。ただ、立憲民主党は本当に政権を担う覚悟があるのか疑問が残ります。岸田さんが金融所得課税でブレたのは確かですが、時限的とはいえ消費税率の半減や年収1千万円以下の所得税ゼロを打ち出すなど分配一辺倒の立憲が政権を取ると、株価は大きく下落するでしょう。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産が目減りして、一般の国民にも影響が出ます。安倍政権が推し進めた巧妙な仕掛けですが、それに立憲政権は耐えられるのか。

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