現在、YouTuber事務所は日本にも複数あり、企業案件はどの事務所を通しても受けられる場合、より条件が良い(手数料の少ない)事務所に移籍することも珍しくありません。有名YouTuberの離脱や事務所退所は、手数料などの条件や事務所が提供する価値が根本の原因です。しかし、多くのYouTuberが在籍する事務所が、一つ一つのチャンネルのコンサルタントとしての役割を担うことは、ほぼ不可能です。ジャンルごとにリサーチする内容もトレンドも異なり、チャンネルの数だけ問題や課題があると言っても過言ではない業界です。すべてのYouTuberに懇切丁寧なコンサルやプロデュースを行うことは現実的ではありません。では、事務所は何をすべきなのでしょうか。

 自社のコンテンツを創作し、伸ばすことが一つです。例えば、ゲームやアニメを制作する会社は、著作権や版権や知的財産権を保有しているために売り上げが安定しています。特許を多く保有する会社も同様に、ビジネスモデルが盤石です。具体的には、ディズニーや任天堂やコカコーラのような「オリジナル」の権利を保有している企業です。制作物や権利を保有する会社は、どのジャンルでもその権利が企業自体の価値の裏付けになります。ここで重要なのは、権利が所属しているクリエイターではなく、会社が保有する点です。アメリカのYouTuber事務所は、クリエイターに依存しない業績を作る施策を行なっていました。もちろん他にも、スクール事業や広告業など価値創造の方法はさまざまですが、「YouTuberに頼らない独自の付加価値」をもてるかどうかが、今後のYouTuber事務所の明暗を分けます。

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