まず思ったのは、チーズのブランドの多彩さ。東京のイタリアンレストランが併設したチーズ工房もあれば、牧場もあり、大手乳業メーカーもある。例えばカマンベールチーズがグランプリに輝いたタカナシ乳業だ。
「フランスのイズニーサントメール酪農協同組合との業務提携で生まれた商品です。伝統的製法を踏襲しながら、タカナシ乳業が大切にしてきた北海道根釧地区の生乳を使い、深みのあるカマンベールに仕上げました」(タカナシ乳業)
■ほかほかのご飯にのせ
口に含むと、いつも食べているカマンベールとは、別物。
「繊細な味わいが特徴ながら、風味が弱いという意味ではなく、五味のバランスが良く、うまみの組成が複雑」
そう前出の坂上さんが挙げていた日本チーズの特徴が、一口で体感できる。一方、日本の伝統的な発酵食品との、「うまみの相乗効果」が堪能できるのは、「青カビ」の部で、最優秀部門賞を受賞した「ジャパンブルーおこっぺ」(冨田ファーム)。
高脂肪、高タンパクの自社の牛乳を原料に、「ウニ」にたとえられるほどうまみが深いブルーチーズを作った。さっそくほかほかのご飯にのせ、しょうゆを垂らして、いただきます! やばい。ウニ丼より濃い。
ちなみに日本の国産チーズは国際的な評価も高まっているという。11月2日に英国で開かれた最も権威ある国際チーズコンテスト「ワールドチーズアワード2022」では、日本から出品した34品のうち18品が受賞したそうだ。
生鮮市場アキダイ関町本店(東京都練馬区)で秋葉弘道社長が言う。
「輸入品との価格差が縮まったとしても、国産もエサ代や燃料費など、苦しいことに変わりはない。廃業する会社もあり、数年後に食料自給率が大幅に下がっている可能性もありそうです。国なり自治体なりが、生産者を守らないと、大変なことになる」
一方、消費者にできることといえば、この円安を機会に国産品の良さを知ること。例えば国産チーズで、私は自給率上げますわよ。(ライター・福光恵)
※AERA 2022年11月21日号より抜粋