
本来は、首位の立場を生かし、中韓勢に先んじて主要市場での大規模な先行投資を行うべきだったのだが、パナソニックには先立つ資金がなかった。そのうえ、頼みのトヨタがEV化に抵抗し、経済産業省もそれに同調する中では、巨額投資リスクは大きすぎる。同社が米国で6000億円投資すると発表したのはこの夏のこと。ライバルよりはるかに遅れ、しかも規模も小さい。中国CATLやBYD、韓国のLGエナジー、サムスンSDI、さらにはSKイノベーションなどが世界中で桁違いの投資を進めるのを見ると苦戦は必至だ。
経産省にいたっては、「蓄電池産業戦略」を発表したのが今年8月末。EV化に抵抗するトヨタへの忖度だろうが、ここまで手をこまぬいてきた責任は大きい。
日本製造業最後の柱である自動車産業がEV化で世界に遅れたのは自業自得だが、その影響で、「下請け日本」の最重要産業である車載用電池でも中韓勢に敗北すれば、日本経済没落の象徴として歴史に記されるだろう。
パナソニックの巻き返しに期待しつつその成り行きを注視して行きたい。
※週刊朝日 2022年11月25日号