古賀茂明氏
古賀茂明氏
この記事の写真をすべて見る

 電気自動車(EV)で日本の自動車メーカーが世界に遅れをとったことはよく知られるようになった。トヨタの派手なCMは、同社がEV化の先端企業であるかのような印象を与えているが、世界では、米テスラが年間100万台超のペースでEV生産を伸ばし、それを中国勢が急追する中、トヨタのEV販売は年間数万台で存在感はゼロだ。しかも、同社の旗艦EV、bZ4Xは発売直後にお粗末な欠陥が発覚して全車リコールとなった。今後の見通しも暗い。

【この記事の写真の続きはこちら】

 今回は、その次に待つ危ない話を紹介したい。

 それは、トヨタではなく、パナソニックの車載用電池の将来についてだ。「電池と言えばパナソニック」というのは常識だ。EVの盟主テスラが今日あるのもパナソニックが電池を供給したからである。同社は、販売量だけではなく、技術でも常に世界をリードしてきた。

 EVメーカーにとっては、部品コストの3割を占めると言われる電池の調達は最優先事項である。EVの生産拡大に伴い電池の需要も急拡大すると予測されるが、高性能電池を大量生産できるメーカーは自動車メーカーに比べて数が極めて少ない。そのリーダー、パナソニックの前途は極めて明るいはずだ。

 しかし、パナソニックは、日本の企業だったことが仇となった。世界のEV市場では、覇権を争う米中に欧州と韓国のメーカーも交えて、激しい競争が展開されている。自動車市場と言えば、米欧中に加え日本も重要な地位を占めるが、ことEVに関しては、日本の生産はほとんどゼロに近い。日本で電池を量産しても国内需要が小さいパナソニックは非常に不利な立場にある。

 一方、米欧中の電池市場では、EV販売が急拡大し、電池不足の状況に陥っている。このため、各国の政府の支援を受けた世界の電池メーカーは兆円単位で投資を進めている。

 パナソニックの車載用電池市場での世界シェアは、15年には37%で断トツだった。しかし、21年には、中国のCATLが39%、韓国のLGエナジーソリューションが19%、パナソニックは12%と完全に逆転され、しかもその差は拡大しつつある。

次のページ
車載電池市場で日本が立ち遅れた理由