3つの事件の容疑者の犯行の詳しい背景はわからないが、一つの可能性として、もともと犯罪に手を染めるようなタイプではないとも考察できるという。
「特定の誰かを狙った事件ではないので、非行少年だったというわけではなく、むしろある時期までは人生がうまくくいっていたのではないかとも考えられます。それが、途中でつまずいてしまい、そこから立ち直ることが困難になってしまう。本来の自分は、もっと世の中から評価され、女性にモテて、良い給料をもらうはずだったという思いがあり、それが叶わなかったのは自分の責任ではなく、世の中が悪いからという被害者意識を持つタイプかもしれません。まずは想像を膨らませて、いつか世の中を見返してやりたいと思いながら生活していて、ある時、突然、頼りにしていた人に冷たく突き放されたり、駅の階段で人とぶつかって相手から罵声を浴びさせられたりといった些細なできごとが引き金になって、犯行を実行に移そうとするパターンもあります」
しかし、理不尽な世の中に対して怒りを持つは大勢いる。それでも他人を傷つけるような犯行に及ぶ人はほとんどいない。本来は「心のブレーキ」がかかるものだという。
「『こいつ、ぶん殴ってやりたい』というようなことは、誰でも一度は思うものですが、実行したら家族が泣く姿とか、今の生活を失う姿を思い浮かべて踏みとどまります。決してよいことではありませんが、お酒を飲んで接待を受けるような場所で『俺は客だぞ』と豪語したり、近しい友人や親族に八つ当たりしたりして、憂さ晴らしをする。人は犯罪にはならないようなことで適度にストレス発散をするものです。それができないのは、ある意味で真面目な性格とも言えます。もちろん、犯罪行為はあってはなりません」
詳しい犯行の動機や経緯は捜査によってこれから明らかになるだろう。模倣犯による負の連鎖を止めるために、われわれができるのは、周囲に落ち込んでいる人がいたら気に留めて声をかけることだという。