小田急の事件も、京王の事件も、鉄道という公共の場で起きた事件として注目を集め、繰り返し報道された。乗客が撮影した車内が騒然となる様子の映像は、何度もニュースで流れた。

 窃盗で直ぐに逮捕されたという報道であれば、同じ手口を使うことはやめるといった抑制が働く。しかし、容疑者の目的が金ではない場合は、影響を受けて連鎖する可能性があるという。

「彼らの目的がお金ではなく、むしろ逮捕されて大きく報道されて目立ちたいと思っていると、自分も真似すれば有名になるだろうと思って連鎖してしまうのでしょう」

 容疑者がどの程度、意識していたかはわからないが、九州新幹線の事件が犯行現場を列車内に選び、火をつけようとした点を考えれば、京王線の事件だけでなく、小田急の事件も影響した可能性があるという。

「京王線の事件からは電車内は逃げにくく、火をつけて燃え上ったらとんでもない被害が出ること学んだのでしょう。九州新幹線の容疑者の年齢は若くはありません。火は体力がなくても扱えると考えたと推察できます。小田急の事件は刃物で刺傷しましたが、相手によっては激しく抵抗されるので、腕力に自信がないと刃物を振り回す方法はとらないと思います」

 また、容疑者らに共通するのは、綿密な逃亡の計画は立てていないようだったこと。九州新幹線の事件と京王線の事件では容疑者は逃げもしなかった。

「よく無差別大量殺人事件が起きるアメリカでは、その場で射殺されるケースが少なくありません。射殺される容疑者は逃げようとしていない場合があります。あるいは、犯行の計画は立てるものの、逃亡計画はほぼゼロで、その場で取り押さえられることがあります。列車内は相手を襲いやすい一方、自分が逃げにくい場所でもあります。逃亡を計画していたら、犯行場所として選ばない。そう考えると、むしろ容疑者は、自分が犯行に及んだということが世間にわからないと意味がない、と思っていたのではないでしょうか」

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