日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「HPVワクチン接種勧奨を正式に再開」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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11月12日、厚生労働省の厚生科学審議会が開催され、HPVワクチンの「積極的な接種勧奨」が再開されることが決まりました。厚生労働省は今月中にも、約8年ぶりに積極的な接種勧奨を正式に再開し、開始時期などを自治体へ通知する予定だと言います。
2013年4月、HPV ワクチンの定期接種(小学校6年生から高校1年生相当の女子が該当)が日本で開始されました。しかしながら、2カ月後には副反応の懸念から「積極的な接種勧奨」は中止。その結果、HPV ワクチンの接種率は1%未満にまで激減してしまいました。
HPVワクチンとは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染予防に効果のあるワクチンです。HPVには100種類以上の型があり、子宮頸がんのほとんどは高リスク型のHPVに持続的に感染することで発症します。HPV16型と18型の2種類が、子宮頸がんの原因の約7割を占めています。HPV感染の多くは免疫力によって排除されますが、持続感染してしまうと前癌病変を経てがんになってしまうのです。こうしたことから、日本ではHPVワクチンは主に「子宮頸がんワクチン」と呼ばれています。
実は、HPVの感染によって引き起こされるのは子宮頸がんだけではありません。肛門がんや中咽頭がん、尖圭コンジローマなどもHPVの感染と関連していることがわかっています。そのため、米国や英国、カナダ、ブラジルなどではこれらHPV関連がんの予防に対し、男女を問わず接種が進んでいます。日本でも2020年12月25日に、4価HPV ワクチンの男性への接種と肛門がんへの適応拡大が承認されました。しかしながら男性への接種は任意接種のため、全額自費負担となっています。