エジプト考古学博物館。入口もこんなにすいています
エジプト考古学博物館。入口もこんなにすいています
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「おや?」と思って立ち止まる。そしてはじまる旅の迷路――。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界を歩き、食べ、見て、乗って悩む謎解き連載「旅をせんとや生まれけむ」。今回は、コロナ禍の旅のマスク着用について。

>>【前回:ひょっとしたらアジアだけ?成田と韓国・仁川はよく似ている 国際空港の水際対策の落差】より続く

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 エジプトへの旅。コロナ禍での旅である。訪ねる国にウイルスをもち込まず、日本にもち帰らないために細心の注意を払った旅だった。いや、そのはずだった。

 しかしカイロ国際空港に着いた僕は、別世界に入り込んだような気がした。

 日本からの飛行機は、エチオピアのアディスアベバ経由のエチオピア航空だった。アディスアベバを発つのが夜の10時。カイロ到着は午前1時20分。一般的には敬遠される便だった。新型コロナウイルスの水際対策で入国に時間がかかることも多い。つらい時間帯の審査になる。ところが飛行機は満席だった。アジアを飛ぶ便は空席だらけだというのに。

 エジプトに入国するには、PCR検査の陰性証明が必要だった。エジプトが指定する検査法に対応する検査機関を調べ、QRコードもつくってもらい、料金は2万5300円。

 カイロ国際空港に到着し、証明書を見せると、職員は一瞥して、

「OKです。はい次の人」

 目を皿のようにしてチェックしてほしいとはいわない。しかし2万5300円もかかった書類なのだ。

 それだけではなかった。その検疫官は防護服はもちろん、マスクすらしていなかった。周囲を見た。PCR検査の証明書チェックに並ぶ乗客でマスクをしていたのは半分以下だった。

「絶対、エジプト考古学博物館は行ったほうがいい。中国の団体客が来ないから、ゆっくり静かにツタンカーメンのマスクも鑑賞できる。こんなことはめったにないから」

 宿の主人からそういわれた。

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白タクの運転手が近づいてきた