あきた・さとし/1981年生まれ、茨城県出身。40歳(撮影/写真部・東川哲也)
あきた・さとし/1981年生まれ、茨城県出身。40歳(撮影/写真部・東川哲也)
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 短期集中連載「起業は巡る」の第2シリーズ。今回登場するのは、アフリカの電気がない地域で暮らす人々に明かりを届ける「WASSHA(ワッシャ)」の秋田智司(40)。AERA 2021年12月6日号の記事の1回目。

【写真】WASSHAが開発した発電システムがこちら

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 高校2年生の5月、中間テストの少し前。秋田智司は初めてできた彼女にフラれた。新しい彼氏ができたのだ。傷心の秋田は勉強も手につかず、地元の図書館をぶらぶらしていた。

 何とはなしに手に取った雑誌が、アフリカの特集を組んでいた。エスニッククレンジング(民族浄化=部族間の殺し合い)、少年兵、レイプ。ページをめくると、聞いたこともない言葉が次々に飛び込んできて、16歳の秋田はその場に立ち尽くした。自分より年下の女の子が兵士にレイプされて妊娠し、生まれた赤ちゃんが病気や栄養失調で死んでいく。遠い昔の話ではない。今まさに起きていることだ。

 途上国に興味が湧き、貪(むさぼ)るように本を読んだ。その中には日本人初の国連難民高等弁務官、緒方貞子の本もあった。途上国支援の仕事を志すようになった秋田は大学2年の時、初めてアフリカの地を踏んだ。キリマンジャロの中腹にある村で3週間、植林をするボランティアだった。秋田はそこでタンザニアの若者と友達になる。キツい肉体労働を終えて一休みしている時、サメーヘというその若者が秋田に聞いた。

東京大学本郷キャンパス内にある本社。ほとんどリモートワークで出社する従業員は少ない。秋田もタンザニアと行ったり来たりだ(撮影/写真部・東川哲也)
東京大学本郷キャンパス内にある本社。ほとんどリモートワークで出社する従業員は少ない。秋田もタンザニアと行ったり来たりだ(撮影/写真部・東川哲也)

ビジネスの世界は対等

「サトシは将来、何になるの?」

 秋田は高校生の頃からの夢を語った。

「国連の職員になってアフリカのような途上国の援助をしたい」

 するとサメーヘの顔が曇った。

「なんかちょっとイヤだな」

「え、イヤなの?」

「それってお金を出す方が威張ってて、もらう方は黙って従う関係だろ。僕らはせっかく友達になれたのに、上下関係になるみたいでイヤだ」

 返す言葉が見つからなかったので、秋田はこう聞いた。

「じゃあサメーヘは何になるんだい?」

「僕は起業家になる! ビジネスには学歴もキャリアも関係ない。お客さんが喜ぶビジネスをすれば自分も儲(もう)かるし社会も良くなる。国連なんてハーバードを出たエリートばかりの学歴社会だけど、ビジネスの世界はみんな対等さ。どうだいサトシ、僕の下で働かないか」

「何だよ、やっぱり上下関係じゃないか」

 二人は屈託なく笑ったが、その言葉は秋田の中に深く刻まれた。そうか。起業ってロマンがあって、めっちゃカッコいい。

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