大宮エリーさん(左)と膳場貴子さん(photo 篠塚ようこ)
大宮エリーさん(左)と膳場貴子さん(photo 篠塚ようこ)

膳場:うーん。残念ながら、その後HIVの新しい知見を得たり、被害の実態がわかった時点ですぐに厚生省が対応すれば、被害はもっと食い止められていた。でもね、メディアで一面的に語られることでも、実際にはいろんな面があるから、私はどっちも見て考えたいな、ってすごく思ったの。それがたぶん、私が報道をやりたいと思った原点だと思う。

大宮:当時のNHKって女性は少なかったんじゃ?

膳場:いまと違って女性は30歳くらいまではサブが多かったね。

大宮:そういうもんですか。

膳場:うん。生活情報は女性がメインでも、報道は年配男性がメインっていうのが定番だった。「膳場さんの能力とやる気の問題です」って言われてたら納得したけど、若くて女だとサブなのねって思ってた。

大宮:そのときは、今にみてろと?

膳場:少しは責任持たせてよ、って思ってた。大事な仕事はぜんぶメインの年上の男性がやっちゃうなーって不満に思ったり。

大宮:ケンカには?

膳場:ケンカはなかったけど、自然モノの特集で、沖縄のジュゴンの話をやったんです。藻場に土砂が流れ出てエサがなくなったっていうくだりで、当初の試写では基地建設の影響って説明していたのが、あるとき「護岸工事」ってワードに置き換わって。違和感あったから「え、どうして変わったんですか」っていつまでも言ってたら、「膳場、ちょっと来い」って廊下に呼び出されました。

大宮:「あ! 裸の王様だ!」って言っちゃう人だ、膳場さん(笑)。で、どうやって乗り越えたんですか。

膳場:組織から離れたら一個人として評価されるようになりました。

AERA 2022年11月7日号