14歳で映画デビューし、カンヌ国際映画祭で日本人初となる最優秀男優賞を史上最年少で獲得した、俳優の柳楽優弥さんがAERAに登場。ワンシーンしか登場しない役にも挑戦しようと考えた20代を経て、いま再び主演作の公開が続いている。AERA 2021年12月13日号から。
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若い頃から多くの監督たちと仕事をしてきた人ならではの言葉──。Netflix映画「浅草キッド」での演技について語る言葉を聞いて、そう感じた。
あのビートたけしを演じた。決してモノマネになることなく、観る者を驚かせ、圧倒する演技はどのようにして生まれたのか。そう尋ねると、柳楽は監督である劇団ひとりの「演出」の力が優れているからだ、と語った。
「いろいろな監督とご一緒させていただいておりますが、『演出』自体をしっかりできる方はそう多くはない気がします。でも、劇団ひとり監督は、最初から作品の方向性が定まっていた。しっかりと演出ができる方の作品に参加できたときの喜びは、”興奮状態”に近いものがあります」
ビートたけしとは、過去にバラエティー番組に出演した際、挨拶をしたことがあるくらいで、撮影前に改めて会うことはなかった。だが、10代の頃に聞いた言葉が忘れられないという。
「誰も知らない」で映画デビューし、カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した時のこと。テレビ番組で「こんなに若い時に賞を獲得したら、この後大変だよ」と言っていた。
「ショックでした。14歳で先が決まってしまうのかって。でもその後、実際に演技をすることに悩む時期があったので、先を見通す力がある方なのだな、と。そんな自分が時を経てたけしさんの役を演じているわけですから、人生、本当に何が起こるかわからないですね」
射るような眼差しに時々、少年の頃と変わらぬ笑顔が滲む。
取材で語られたのは、周囲への尊敬の念と感謝の気持ち。年を重ね、どのような俳優になっていくのだろう。並走していけることが、楽しみでならない。(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2021年12月13日号