写真家・小松由佳さんの作品展「シリア難民 母と子の肖像」が12月10日から東京・富士フォトギャラリー銀座で開催される。小松さんに聞いた。
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「今回の写真展は、カラーとモノクロの構成で、2部屋お借りしているんです。手前の部屋はカラーで、トルコ南部を訪れ、訪問者として見えてきたシリア難民の暮らしの断片を撮ったもの。それを見ていただいた後に、奥の部屋に入ってもらう。こちらは、もっと彼らの心情的な部分に踏み込んだ、ちょっと重い展示です」
モノクロの闇の中に浮かび上がるシリア難民の母と子。
「女性の視点だからかもしれないんですけれど、みんな難民として生活がすごく大変ななか、母親と子どもの困難さというのは、男性にはないものがあるように思うんです」
いわば家族の写真なのだが、なぜ、そこに父親が登場しないのか?
「アラブの男性って、基本的に育児、家事はノータッチなんですよ。お母さんは四六時中、子どもといっしょにいて、子どものつらさとか、負の部分を引き受けて生きなければならない。そういう母親と子どもの深い関係性からすると、やはり、父親というのはちょっと離れたところにあるように見えますね」
そう説明する小松さんの言葉が実感をともなって伝わってきたのは、小松さんが2人の子どもの母親で、夫がシリア人と知ってからだった。
■砂漠の民の撮影で訪れたシリアだったが
小松さんが初めてシリアを訪れたのは2008年。
「最初はシリア中部の古代都市、パルミラを訪れ、遊牧民として暮らしていたアブドュルラティーフ一家(3世代で総勢約60人)を撮っていたんです。そこで出会ったシリア人男性と結婚して、いま日本でいっしょに住んでいます。そんなこともあって、ものすごく近いところからシリアの人々の暮らしが急変していくさまを見てきた」
作品に写った人々を見ていると、難民を写したドキュメンタリーであるとともに、小松さんの親族を写した私写真を見るような気がする。