円買い介入はドル/円が140円を超えた1998年以来
円買い介入はドル/円が140円を超えた1998年以来

B:覆面介入に転じたのはアメリカの影響もあるんじゃないですか? ドル安はアメリカのインフレ要因となるため、派手にやると米中間選挙を控えたバイデン政権の反発を招きかねない。実際、9月の介入後には米財務省は介入を容認したのに、10月15日にバイデン大統領は「ドル高は気にしない」と発言しているし、イエレン財務長官も10月24日に「介入が行われるとき、以前は日本から連絡があった」と不快感をにじませました。

■150円“天井”意識させる展開

C:東京時間でなく、NY市場(午後10時半~午前5時※夏時間)に黙って介入したら、米財務長官としては気分はよくないでしょうね。場を荒らされてるわけですから。ただ、過去を振り返ると、1998年の円買い介入もNY時間にやっているんです。逆に、ドル買い円売り介入は東京時間に行うことのほうが多いけど。

──介入による今後のドル/円相場と、株への影響が気になります。

A:10月21日の介入で、財務省は150円の節目をかなり意識していることが伝わり、24日には午前9時前だけでなく、午後9時頃にも149円50銭手前から介入のような下げ局面が見られたので、150円に近づくと介入への警戒感が高まるようになってきました。9月22日の介入は2兆8千億円で、10月21日は5.5兆円と言われてますけど(10月31日公表の財務省「外国為替平衡操作の実施状況」によると9/29~10/27の介入額は6兆3499億円)、、今後は小規模な介入を続けて、150円の“天井”を意識させる方向に変わっていくんじゃないかと見ています。

C:私も同意見です。なぜなら介入原資にも限度があるから。日本の外貨準備は180兆円ほどで、そのうち現金は約19兆円。理論上はすべて介入に投じることも可能ですが、やりすぎるとアメリカから為替操作国に認定されてしまう可能性がある。

 米財務省が半年に1度公表する為替報告書によると、「過去12カ月間のうち8カ月以上の介入、かつGDP比2%以上の介入総額」をオーバーすると、「持続的で一方的な為替介入」に該当するとあります。日本のGDPは約550兆円ですから、その2%は11兆円。すでに9兆円を介入に使ったと考えると残りは3兆円程度。ドル/円を一気に5円も下げるような介入ができなくなっている可能性が高い。だから、小規模な介入を続けて時間稼ぎをするほかないと考えています。

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