C:過去の介入相場を見れば、介入のときに一気に下げても数日かけて全戻しするのはほぼ確実でした。それを狙って介入時に買い向かうのは非常に勝率の高いトレード方法と言えます。その投資家心理を逆手に取って、売り浴びせてくるようになりましたね。

B:そうなんですよ。介入が終わったかなと思ってドル/円に買いを入れて、ドル高が進み始めると売りたたかれる。頭を切り替えて週明け10月24日早朝にドル/円を買おうと思ったら、今度は早朝から介入が入った。9月に稼いだ“介入ご祝儀”が吹き飛びましたよ。

D:僕は証券会社でまとまった資金を運用する自己売買部門のトレーダーで、夜遅くまで相場に張り付くことも頻繁にあります。だから、9月22日は同僚が「インターベンション!(介入の意)」と大声を上げて、介入が入ったことに気づき、それから深夜にかけてBさん同様、ドル/円の買いポジションを立てていきました。だけど、10月21日はトレードを躊躇(ちゅうちょ)しましたね。

 というのも、プライス(為替レート)が壊れていたから。あまりにも大量のドル売り円買い注文が日銀から金融機関を経由してインターバンク市場に流れ、EBS(外国為替取引用の電子仲介システム)上では、現行レートよりもかなり下(円高ドル安)のBid(市場参加者が提示する買値)もバンバン約定していた。だから、10月21日の介入時のドル/円の最安値は146円20銭前後でしたが、翌日の日経新聞などが報じていたようにEBS上では144円半ばのレートでも約定していた。

──10月21、24日について、財務省は介入の実施を認めていませんね。

D:覆面介入に転じたのは、単に手の内を見せたくないからでしょう。1992年のポンド危機時にイギリスはポンド買いの介入を実施しましたが、当時の英財務相が「100億ポンドかけても投機筋をたたく」と発言して、ジョージ・ソロスらに100億ポンド売り浴びせられて敗北したのは有名な話。神田財務官が「(円買い原資は)無限にある」と言ったきり、だんまりを決め込んでいるのは過去の教訓を踏まえてのことだと思います。

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