柄本時生 [撮影/写真部・張溢文、ヘアメイク/住友由香(MARVEE)、スタイリスト/矢野恵美子、衣装協力/CURLY&Co.(The Weft)]
柄本時生 [撮影/写真部・張溢文、ヘアメイク/住友由香(MARVEE)、スタイリスト/矢野恵美子、衣装協力/CURLY&Co.(The Weft)]

「でも、いちおう相談されるだけで、結局いただいた話は、スケジュールさえ何とかなれば、今のところ全部やってますね。1回、足踏みしたのは、昨年、コクーンでやった、『泣くロミオと怒るジュリエット』という舞台ですかね。『ジュリエット役です』と言われて、『そっか、ジュリエットか~』と思って(笑)。でも結局やりましたけど」

◆僕は親父より和枝ちゃん似

 俳優業の入り口は映画。しかも、受験には失敗したものの、大学では映画を専攻したいと考えていた。やはり、映画には並々ならぬ思い入れがあるのだろうか。

「監督をやりたがっていたのは、兄ちゃんです。兄ちゃんは小学校6年生から、映画監督志望でした。僕は、俳優としては、映画を中心にやっていきたい気持ちがあります。で、たまに舞台とかドラマとかに出るのがベストですね」

 そんな時生さんが、次に挑戦する舞台が、KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト「冒険者たち」だ。誰もが知っている最強コンテンツ「西遊記」をモチーフに、天竺を目指す三蔵法師一行が、その道中で時空を超えて神奈川県に紛れ込むという冒険ファンタジー。演出は、神奈川芸術劇場芸術監督の長塚圭史さんだ。

 実は時生さん、事務所経由でオファーを聞くより前に、下北沢で偶然、長塚さんからこの作品のことを聞いていた。

「たまたま道でパッタリ会ったときに、『話聞いてる?』っていきなり言われて、『面白いやつを集めて、神奈川県を巡る“西遊記”ができないかと考えてて、ぜひ時生にオファー出そうと思ってるんだ』って。そのときに思ったのは、『直接オファーされたら“無理っす”とは言えないな』ってことでした(笑)」

 照れなのか、本音なのかわからない語り口は、父親である明さん譲りだが、本人は、「僕は、(母の角替)和枝ちゃん似です」と断言して憚らない。

「演出家から『一緒にやろう』と誘ってもらえることは嬉しいですが、30を過ぎてからの自分の課題としては、『何でもやります』から、『やりたくない』とか『やらないほうがいい』ことも考えてみたい。やらないという選択肢を試してみたい時期かもしれない(笑)」

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