そして、老いると正直楽になる部分も出てきます。自分に対しても人に対しても優しくなれる。いい意味での「だらしなさ」のようなものが身につくからだと思います。
テレビであるタレントさんが「温泉旅館では浴衣がいい」という話をしていました。浴衣って、どう着ても動いているうちにはだけてきますよね。みんなでだらしなくなるのが楽しい、気持ちが休まる、という話をしていて。すごく共感しました。僕は若いころ、浴衣が嫌いだったんです。あのだらしなさが好きじゃなくて。いろんなことに神経を張り詰めていたからだと思います。年を重ねて「もうしょうがないや」と思えることが増えてから、浴衣も好きになりました。
いい意味でだらしなくなれるし鈍感になれるのは「老い」の強みですが、例えば人へのあいさつや礼儀は絶対忘れないようにしようとか、自分で決めた期間で下着と靴下は入れ替えていこうとか、自分で気を使う部分は増やしていきたいと思っています。
何でもかんでも「これでいいや」になると、悪いだらしなさになってしまうから。自戒を込めてそう思います。
しいたけ./占い師、作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究しながら、占いを学問として勉強。「VOGUE GIRL」での連載「WEEKLY! しいたけ占い」でも人気
※AERA 2021年12月20日号