そして、犯行前日に元妻、長男、次男と映画を見たことをきっかけに、「家に寿司を買ってるから、持って行ったるわ」などと元妻に告げた。
元妻方に行く口実をつくって一旦、自宅に戻り、出刃包丁など凶器と寿司を持って元妻方を訪れた。寿司を一緒に食べるなどして、殺害の機会をうかがったものの、ためらう気持ちもあって犯行に及ぶことができなかった。しかし、その後、長男と2人で居酒屋に出かけ、再び元妻宅に戻って2人で飲酒するうちに夜も明けてきたので、そろそろ実行しなければならないと考え、右手で持った出刃包丁(刃体の長さ約15cm)を何度も長男の頭部などに振り下ろしたという。
殺人未遂事件は事前の計画、準備などが綿密に練られていた。
<事前に寿司を買っていくという口実をつくり、犯行に使用した出刃包丁以外に刺身包丁、文化包丁と合計3本も用意。そこへ、スタンガン、催涙スプレー、ハンマーなど多数の凶器を持ち込んでいる>
<逮捕された後、元妻に家族全員を道連れにするつもりであった旨を打ち明ける手紙を出した>
殺人未遂事件の判決文でも計画性、凶悪性が指摘されていた。
今回の放火殺人事件で、谷本容疑者は大阪市西淀川区の自宅近くのガソリンスタンド店で「バイクなどに使用する」と嘘を言って、運転免許証を提示して、ガソリン10リットルを購入。そして今回も谷本容疑者の衣服から催涙スプレー2本が発見された。
また放火事件の犯行前日に非常階段につながる扉に粘着テープが貼られていた。しかし、こちらは心療内科クリニックの西澤弘太郎院長(死亡)が発見し、はがしたという。そして、大阪府警が谷本容疑者の自宅を捜索したところ、2019年7月に京都市の京都アニメーションで36人が死亡、32人が重軽傷を負った放火殺人事件に関する記事が発見されたという。
また谷本容疑者の自宅から「大量殺人」と書かれた手書きのメモも捜索で押収されている。
谷本容疑者は雑居ビルのエレベーターから降りると、すぐに犯行に及んでおり、内部を熟知した様子だったという。
放火時の防犯カメラ映像には、谷本容疑者が火をつけた後、逃げずに炎の中に飛び込むような様子が映っていたことから、「自殺願望があった」(捜査関係者)とみられる。