イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 安倍晋三元首相は「台湾有事は日本有事だ」と表明した。

 日本は米国の同盟国だから、米国が戦うことになれば、日本も戦わざるを得ない、ということだ。

 だが、現在の日本ではそうした体制ができているとは思えない。政府幹部たちは、ひたすら台湾有事が起きないことを願っているのではないか。

 ところが、10月16日から始まった中国の共産党大会で、習氏は台湾統一に強い意欲を示した上で、「決して武力行使の放棄を約束しない」と言った。台湾有事を起こす、と中国のトップが言い切ったに等しい。

 私は強い危機感を抱き、習氏が極めて信頼しているであろう日本の政治家に「習氏の発言に対して何らかの反応、できれば面談をして、習氏が台湾有事を思いとどまるような助言をすべきではないか」と訴えた。

 それに対してその政治家は、「習氏があのような強いことを言ったのは、それをあえて言わなければならない国内事情があったのだと思う。習氏はそれをやることが中国にとっていかに危険でマイナスになるか、よくわかっているはずだ。だから、ここは静かに見守っているべきだと思う」と答えた。自信のありそうな口調であった。なるほど、と私は納得した。その見立てどおり、何も起こらないことを願うばかりだが……。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2022年11月11日号

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