ジャーナリストの田原総一朗氏は、習近平国家主席が台湾統一のために武力行使も辞さない姿勢を示したことで、台湾有事に強い危機感を抱いている。
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私が今最も注目している、というよりも不安を感じているのは、習近平国家主席の中国のこれからの動向である。
習氏が国家主席になる以前に、彼と親しくしていた日本の有識者たちは、誰もが習氏を人間として深く信頼し、彼が国家の代表者になれば中国は民主化する、と考えていた。
実は私自身も、国家主席になる以前の習氏と一対一で30分以上話し合ったことがあるが、彼は決して強権派ではなく、コミュニケーションのできる人物だと捉えていた。だが、習氏は国家主席になると、民主化どころか、どんどん強権国家への体質を強めていった。
2022年9月は日中国交正常化50年であり、同時に日台断交50年でもある。率直に記せば、今、日中国交正常化50年に疑念を抱く国民が増えているはずである。
特に、習近平体制になってから、米中対立がどんどん激化した。
中国の経済力がどんどん強まり、たとえば5G分野では米国よりも中国のほうが強力になっていて、米国は強い危機感を抱いている。
さらに習氏は、最初のころは経済大国を目指すと強調していたのだが、やがて経済強国になるのだ、と転換させた。
これでは、嫌でも米中対立は激化せざるを得なくなる。その間に立つ日本はどうすればよいのか。
保守勢力の多くは、日米同盟を結んでいるのだから、同盟強化のために、日本は中国に対抗できるよう軍事力を思い切って強化すべきだ、と主張している。
その米中対立で現在最も起きそうなのが台湾有事である。
米国の国防総省筋では、近い将来、中国が台湾を統一するために、台湾に武力攻撃をするのではないか、と見ている。そして、中国が台湾を武力攻撃すれば、米国は台湾を守るために中国と戦わざるを得なくなる。そのとき、日本はどうすべきなのか。