ビーダマンといえば、1990年代~2000年代に大ヒットしたタカラトミーの伝説的商品だ。

 ビー玉を腹部から発射する遊び方やデザインが似ていることから、「ボトルマンはビーダマンの復刻版」と認識しているファンもいるようだが、本当はそうではないのである。

 「ボトルキャップを飛ばす爽快感を届けたい」という、ビーダマンとは異なるコンセプトに端を発し、試行錯誤を重ねた結果、おなじみの姿に近づいたというのが実際のところだ。

コロナ禍で対面イベント自粛も
SNSで「親世代」に訴求

 こうして商品の骨子が固まり、発売が近づいてきたころ、タカラトミーを予想だにしなかった試練が襲った。そう、コロナ禍である。

「コロナ前までの玩具販売では、おもちゃ売り場などで対面型の体験イベントを開き、顧客と直接交流するのが一般的でした。それが一転、慣れ親しんだ手法を一切使えなくなったのです」

 顧客との接点がネットの世界に限定された中、ボトルマンの認知度を高めるには、SNSで多くの人の目に触れさせるしかなかった。

 どうすれば「バズる」のか――。策を巡らせた末に高坂氏らのチームがたどり着いた答えは、「まずは大人世代に火をつける」ということだった。

 その意図を知る上で、押さえておきたいのが玩具市場のトレンドだ。

 近年の市場規模に目を向けると、20年度は前期比1.2%増の8244億円、21年度は同8.5%増の8946億円(いずれも日本玩具協会調べ、希望小売価格ベース)と、コロナ禍においても拡大を続けている。

 その立役者となっているのは、トレーディングカードやプラモデル。大人にも根強いファンが存在し、親子で遊ぶ人も多い「2世代型」の製品だ。

 つまり、玩具業界でヒット商品を生む上では「おもちゃ=子ども向け」という既成概念にとらわれず、大人(特に親世代)の需要を取り込むことがカギになっているのだ。

ボトルマンはビーダマンの復刻版や後継機ではないが、両者が公式にコラボした商品も存在する。それがこの「ボトルフェニックスDX」だ
ボトルマンはビーダマンの復刻版や後継機ではないが、両者が公式にコラボした商品も存在する。それがこの「ボトルフェニックスDX」だ

 ボトルマンに話を戻そう。まず大人に狙いを定めた高坂氏らは、発売の約2カ月前から、Twitterや公式サイトで布石を打ち始めた。

「ネット上で情報解禁のカウントダウンを始め、ちょっとずつ中身やシルエットを明かしていくことで、ビーダマンで遊んだ経験がある大人たちが『一体何が発売されるんだ?』とざわつき、注目されました」

「この施策を2週間ほど行い、親世代の認知度を高めた上で、子ども向けの雑誌やテレビ番組での告知に移りました」

 そうした「2世代型」のマーケティング戦略が功を奏し、ボトルマンの情報解禁を告げる20年9月15日のツイートは1.4万件の「いいね」を獲得。他の関連ツイートも数万件の「いいね」やリツイートを集め、Twitterでトレンド入りを果たした。

 その盛り上がりのまま、20年10月24日に発売したボトルマンが飛ぶように売れ、2年間で累計130万個を販売したのは前述の通りだ。

 ここで注目すべきポイントがある。ボトルマンの販売個数の内訳を見てみると、1年目の実績が60万個だったのに対し、2年目は70万個に増えている。

 発売から時間がたっても、売れ行きのペースが鈍化するどころか、さらに加速しているのだ。

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