(写真部/東川哲也)
(写真部/東川哲也)

 ギリギリを攻めた演技がかもしだす狂気――文字にするとおどろおどろしいが、撮影現場では笑いが起きているという。

「リハのときは、その現場にいる誰かしらがクスクス笑っているという。“あぁ、またやっているよ”という感じです(笑)」

 そんな桜井ユキは今年、女優デビュー10周年を迎えた。節目の年となる今年は、初の写真集も刊行される。撮影は生まれ故郷である大分県や青春時代を過ごした地元の福岡県で行われたという。

「私もちょうどお芝居を始めて10年ということで、何か形に残したいなとは思っていました。最初はそれが写真集という形とは結びついていなかったんですけど、たまたま写真集の提案をいただいたタイミングと自分の心境の変化というか、タイミングが一致しました。撮影場所は私から提案させてもらった、おばあちゃんの家だったり、子どもの頃遊びに行っていた場所だったり、自分の幼少期を過ごしてきた場所ばかりなので、感慨深い気持ちになりました。もちろん他人様に見ていただくものではあるのですが、自分としても思い出の1冊になり、完成した本を手にした時には感動しました」

 節目の写真集を「ただ単純に美しいもの」にしたくなかったと言う桜井。映像のようなストーリーを感じさせる1冊にするために、あえて生まれ故郷を撮影場所に選んだのは、彼女の挑戦だったようにも感じる。

「祖父母の家でも撮影しましたが、最初は仕事モードの自分と幼少期に家族と過ごしている自分で揺れ動くような、『誤作動』みたいな感じがありました。“あれ?これどっちでいればいいんだろう?”って。なので、玄関を入った瞬間“これって大丈夫かな?”と思ったんですけど、カメラマンのアンディ・チャオさんが私をナチュラルでいさせてくれる持っていき方が上手で、全然心配したような感じにもならずに済みました。仕事モードというよりは、おばあちゃんおじいちゃんの家で過ごしている時間に近いような表情でいられたような気がします。慣れ親しんだ香りもそうですし、すごく心地よい空間で、見覚えのあるものに囲まれての撮影だったので、上がった写真を自分で見てもやっぱり表情が柔らかいんですよね」

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