
彼らは日本の植民地は「韓国の近代化に寄与した」とし、「慰安婦」女性たちを金目当てだろうと日の丸を振り、「少女像を撤去しろ」「水曜デモは中止しろ」と声をあげ、「慰安婦20万人説はうそ」と主張している。特に女性が被害の声をあげることに怒り、フェミニストをフェミニストだからという理由で批判する。
これらは日本国内にも根強くある声と全く同じだ。韓国の若いフェミニストたちが冗談まじりに「日本と韓国の男性は兄弟のように似ているね、結婚すればいいのに!」というのを聞いたことがあるが、「慰安婦」運動や、性暴力サバイバーに向ける憎しみや、日本の植民地時代に対する理解は驚くほど一致する。それこそ親しい兄弟のようだ。いったい「慰安婦」運動に対する嫌悪の根底には、国境を超える「何」があるのだろうか。
2017年に韓国では民主主義革命が起きた。数百万人がキャンドルを持ち集まり、大統領を弾劾し民主主義革命を起こした。#MeToo運動は社会の声になり、堕胎罪の廃止や性暴力刑法改正など、ジェンダー平等に向けた取り組みが社会を動かしてきた。若者たちが「慰安婦」運動に積極的に参加し、2019年に「慰安婦」運動を牽引してきたサバイバーの金福童(キム・ボクトン)さんが亡くなったときは、無数の若者が葬儀に参加するのをこの目で見てきた。水曜デモにかけつけ、「少女像」を絶対に撤去させないという若者たちの声を聞いてきた。韓国のフェミは盤石に見え、日本の指針になる存在のように感じていた。
もちろん、韓国で起きている激しいバックラッシュは、そのような#MeToo運動、女性運動があまりにも成功した証しだともいえる。例えば、韓国の野党第1党である国民の力の30代の男性党首は “いきすぎたフェミニズム”への懸念を語り、若い男性たちの支持を得ている。彼は韓国のジェンダー平等を牽引してきた女性家族部の廃止も公言し、女性を積極的に決定権のある場に引き上げる制度や、選挙のクオータ制にも異を唱えている。2021年、ソウル市長選にフェミニストとして立候補した女性が、女性政策に保守的な野党の国会議員候補者になることを表明するなど、ねじれた現象も起きている。