
離職や転職など雇用関係の終わりをネガティブに捉えるのはもう時代遅れ。一度組織を離れた後に再入社する「出戻り社員」に熱い視線が注がれている。AERA 2022年10月31日号の記事を紹介する。
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「『出戻り入社』『ジョブ・リターン』『カムバック』など呼び方はさまざまですが、再入社制度はここ10年で大企業を中心に一気に進んでいます」
こう話すのは、パーソル総合研究所の小林祐児上席主任研究員だ。
コロナ禍以前から大企業を中心に導入が進むのが、再入社も視野に入れた「アルムナイ」(英語で「同窓生」の意味)。もともとは大学など教育機関の卒業生の集まりを指すが、それが企業の退職者に対する考え方へ拡張されてきた。雇用関係を離れた元社員と会社が継続的に情報交換したり、離職者同士のネットワークを推進したりする取り組みだ。
小林さんらの2019年の調査では企業全体の再入社制度導入率は8.6%、5千人以上の企業は20.2%だった。
「中外製薬」は20年にアルムナイ制度を導入した。人事部エンプロイーサポートグループの山本秀一マネジャー(51)は「多様な人材確保のため、退職者が転職先などで得たスキルを生かして再度活躍できる機会を用意したい、と考えました」と説明する。「明治」も退職理由を問わず元社員を受け入れる「リ・メイジ制度」を20年から導入している。
背景には構造的な人手不足がある。人材獲得競争が激化するなか、同じ会社への再入社は企業・従業員ともにメリットが大きい。企業は人材紹介費などの採用経費がほとんどかからない上、他組織の人脈や業務・風土などを経験している社員を迎えることは業務の効率アップにつながる。
■「居場所」を求めて
小林さんらの調査でも、出戻り経験者からは「仕事内容が事前にイメージできた」(42.7%)、「周囲が出戻りを歓迎してくれた」(38.7%)と肯定的な回答が目立った。
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