■政治との接近は韓国や米国でも

 本当に送金の大幅減額が可能か、ノルマの有無などについて教団に質問したが、期限までに回答はなかった。

 一方で韓国の本部は、国内の信者には多額の献金など強要していない。自民党への浸透が明らかになった旧統一教会だが、自国内でも時の政権に巧みに接近し、米政界をも手玉に取った。

 韓国で統一教会が創設されたのは、朝鮮戦争休戦の翌年の1954年。61年、軍事クーデターで朴正煕氏が権力を掌握すると(63年から大統領)、多くの宗教団体が抗議するなか、統一教会は「反共」を掲げ支持に回る。コリア・レポート編集長の辺真一氏が説明する。

「韓国正教会から異端視されていた統一教会が成長を遂げたのは、朴正煕政権が全面的に庇護したからです。その後、統一教会は米国にも進出して75年にマンハッタンのニューヨーカーホテルを買収しています」

 76年には米下院フレイザー委員会で、韓国政府による米政界工作スキャンダルの「コリアゲート事件」が発覚した。

北朝鮮を“サタン”扱いする文鮮明氏は、ニクソン政権が在韓米軍を撤退させようとしていることに危機感を抱き、KCIA(韓国中央情報部)と結託。在米韓国人実業家のトンソン・パク(朴東宣)と連携して米国会議員にロビー活動を行い、撤退を阻みます。冷戦終結後の91年には一転して北朝鮮を訪問し、金日成主席と会談。北朝鮮と太いパイプを持つに至ります。98年に大統領に就任した金大中氏の対北融和政策を支持し、文氏は国内での政治基盤を確立していったのです」

 前出・山口弁護士がこう語る。

「何のことはない。文氏は右でも左でも政治的に結びついて、統一教会を国教にすることを目指したのです。『天一国』と称して、文鮮明氏や韓鶴子氏の御言葉がそのまま国の方針になる。これこそが文鮮明の夢想した地上天国の実現なのです」

 全財産をなげうって付き合わされた日本の信者たちは、たまったものではない。(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2022年10月14・21日合併号

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