今季は打者としてすでに規定打席数をクリアし、投手でも規定投球回数の到達まであと1回。ダブル達成となれば、1900年以降、誰もなしえなかった偉業だ。大リーグ評論家の福島良一さんは驚きを隠さない。
「分業制が当たり前になった現代野球で、打者としてフル回転しながら投手としても規定投球回数をクリアするなんて考えられない。大リーグの歴史上でも指折りの選手と言っていいでしょう」
昨季に比べ、投打ともにパワーアップしていると福島さんは力説する。
「全体の平均球速が増し、スプリットに加え、スライダーにシンカー系のツーシームと、どの球種もキレはメジャートップクラス。制球もよくなり、球数制限があるなかでも長いイニングを投げられる。本塁打数は減っていますが、後半戦に成績が落ちた昨季とは違い、シーズンを通して安定した打撃を見せています」
熾烈なMVP争いも注目を集める。ライバルのアーロン・ジャッジ(ヤンキース)は、リーグのシーズン最多本塁打記録に61年ぶりに並ぶ61本塁打を放ち、打率、打点ともハイレベル。三冠王を視野に入れる。
「ジャッジはメジャー史上最高のシーズンを送っていて、なおかつヤンキースは地区優勝を決めています。個人成績では甲乙つけがたくとも、記者投票のMVP選出ではチーム成績も影響するため、ジャッジが優勢でしょう。でも、そんなジャッジとMVPを争っていること自体がとんでもない、大谷選手のすごさなのです」(福島さん)
活躍すればするほどに大谷ロスは深まるばかりだが、桧山さんは自分を励ますように、こんなアドバイスを送る。
「“ロス”も期間限定です。今季で終わりではなく、来季があるんですから。新たな大谷選手を見るための準備期間と捉えれば楽になれます」
さらなる進化を遂げた姿を楽しみに待ちたい。(本誌・秦正理)
※週刊朝日 2022年10月14・21日合併号