<ライブレポート>鈴華ゆう子ソロライブで新しい一面と今後の姿を表現 和楽器バンド・神永もサプライズ登場
<ライブレポート>鈴華ゆう子ソロライブで新しい一面と今後の姿を表現 和楽器バンド・神永もサプライズ登場
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 和楽器バンドのボーカル・鈴華ゆう子が、ソロライブ【鈴華ゆう子 Jazzy Night 2022】を5月21日にBillboard Live TOKYOにて開催した。

 昨年、誕生日の6月7日にバースデーライブとして同会場で行われて以来、約1年ぶりとなる【Jazzy Night】。和楽器バンド、そして通常のソロのライブでも味わうことのできない多才な鈴華ゆう子の一面を、さらには今後の鈴華ゆう子を垣間見ることのできる極上の一夜となった。

 ライブのスタートを飾ったのは、鈴華が2年前にYouTubeで発表した「うたいびと」だ。広田圭美(Pf/バンドマスター)、蓮池真治(B)、Yeongkwi Lee(Dr)といった初のピアノトリオ編成で紡がれる、ゆったりとしたバンドアンサンブル。その中心にいる鈴華の伸びやかなボーカルが、会場となるBillboard Live TOKYOの空気を一変させる、圧倒していく、そんな感覚に襲われた。鈴華にとっては、その声自体が名刺代わりと言わんばかりに。

 事前に予告されていた通りに、セットリストにはリクエストの寄せられていたカバー曲が多く含まれている。ジャズのスタンダードナンバーでディズニー映画『白雪姫』の挿入歌としても知られている「Someday My Princess Will Come(いつか王子様が)」のスロージャズアレンジ、続くORIGINAL LOVEの代表曲で、最近はTikTokで再び脚光を浴びている「接吻 –kiss–」のボサノバ。中でも美空ひばり「リンゴ追分」のカバーは一際、贅沢な時間だった。鈴華の家から弾き語り配信をするほどに、公私ともに仲の良い広田が「詩吟の節調」「ジャズと和の相性の良さ」という2点から選曲、アレンジしていった楽曲だ。先述のカバー2曲では演奏に合わせて鈴華のボーカルも弾むような印象だったが、演歌である「リンゴ追分」ではこぶしを効かせ歌い上げていく。鈴華の舞扇子も目を引くポイントだった。

 「リンゴ追分」に続く、クラシックナンバー「チャルダッシュ」では広田と鈴華の息のあった連弾を披露。さらにアンコールでは「童神 ~天の子守唄~」にて、鈴華が三線を演奏している。沖縄をこよなく愛する鈴華は、ダイビングのライセンスを取得し、2021年4月には自身のYouTubeチャンネルに教則本を見ながら独学で学んだ三線での「安里屋ユンタ」弾き語りをアップ。今回、ステージに登場したのは、石垣島で購入したより本格的な2本目の三線。職人、そして楽曲との運命的な出会いを熱弁しパフォーマンスされる「童神 ~天の子守唄~」を聴いて感じるのは、鈴華がボーカリスト/詩吟師範/ピアニストという多才な音楽家であることはもちろん、自身の中にある好きという気持ち、ある種の貪欲さが音楽へと還元されているということだ。

 鈴華にとっての和楽器バンドもまた自身に大きな影響を与え、同時にソロとしてのボーカル力を還元してきた循環の場所である。和楽器バンドから披露されたのは「シンクロニシティ」。「和楽器と洋楽器の融合」というコンセプトのもと確固たる地位を築いた和楽器バンドが、2017年のベストアルバムのタイミングでこれまでとは違った路線のアレンジに挑戦し、ファンを驚かせたのが「シンクロニシティ」だった。もともとのジャジーな曲調からも、この日に歌うべくして歌われた楽曲である。神秘的な楽曲のイメージを持つ和楽器バンドの「月下美人」もジャズのアレンジと抜群にマッチしていた。

 また、ライブ中盤には和楽器バンドの尺八・神永大輔が客席からサプライズ登場した。“ジャジーナイト”ということで、その服装はまさかのジャージ。あくまでも神永にとっての正装である。鈴華ソロの『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』挿入歌「戦火の灯火」に、神永が尺八で参加するという、演奏後に鈴華も触れていたように渋み溢れるこの日だけのコラボレーションだった。

 ほかにもセルフカバーとして、フィーチャリングで参加したQ-MHzの「Dark spiral journey」を、バンドを引き連れて初演奏。そして、特筆すべきは「カンパニュラ」である。昨年の【Jazzy Night】で初披露されたこの曲は、1年で鈴華にとっての代表曲へと大きく成長していった。森山直太朗が作詞・作曲を担当し、Kan Sanoがアレンジに参加。和のピアノ旋律に美しい情景が浮かぶ歌詞、鈴華の力強くも透き通った歌声は海外のリスナーへとリーチし、さらには「カンパニュラ」に心が浄化されたというIKKOの熱烈なリクエストによって今年1月には『うたコン』(NHK総合)でも歌われた、まさに鈴華を新たなフィールドへと押し上げた楽曲と言える。「一生大切に歌っていきたい」と感謝を込め、鈴華は「カンパニュラ」を歌唱。ほかの曲に比べるとジャズというよりかは、原曲になぞらえたアレンジをピアノトリオで、といった印象。鈴華の人生やこれまでの経験を森山が歌詞に充てた「カンパニュラ」を聴き、これから一生をかけて歌い続けていくことでさらに深みが増していくのだろうと想像もさせた。

 公演のラストには、新曲「泥棒」がいち早くパフォーマンスとなった。鈴華がイラストレーター、アートディレクター、コピーライターとともに「音楽と花」というテーマを掲げて発足したプロジェクト「SUZUHANA」として、6月7日に発表される楽曲だ。ジャジーかつ艶やかさをも醸し出す、多彩な鈴華の表情や声をまた一つ発見できる楽曲、プロジェクトになることを予感させる。

 鈴華自身がコメントしているように、ソロのライブは全ての面をありのままに表現出来る“bornの場所”。今年の【Jazzy Night】も、鈴華にとってのルーツとオリジナリティー、そして新たなチャレンジを示す貴重な一夜となった。

Text by 渡辺彰浩
Photos by KEIKO TANABE

◎【鈴華ゆう子 Jazzy Night 2022】セットリスト
※5月21日(土)2ndステージ

1. うたいびと
2. シンクロニシティ
3. いつか王子様が
4. 接吻 –kiss-
5. カンパニュラ
6. 戦火の灯火
7. リンゴ追分
8. チャルダッシュ
9. 月下美人
10. Dark spiral journey
En1. 童神~天の子守唄~
En2. 泥棒猫(新曲)