ジャーナリストの田原総一朗氏は、日本的経営に改革が必要なことを指摘する。
* * *
米国、中国、韓国、台湾などに無残に立ち遅れ、規模が縮小してしまった日本経済をいかにして活性化させるか。大手メディアの中にも強い危機感を持って、この問題にどう取り組むべきか考え始めたところもある。私自身こうした取り組みのプロジェクトをこれまで多く発信してきた。
2012年に第2次安倍晋三政権が発足した。日本の経済状況は極めて悪かった。そこで安倍首相は日銀の黒田東彦総裁と組み、思い切った財政出動をする異次元の金融緩和を敢行した。これにより内需が拡大、経済が成長する、と自信を持って言い切ったのである。
18年に安倍首相は3選されたが、内需は拡大せず、経済も成長していなかった。安倍首相は、「どうもアベノミクスは成果を上げていないようだ。どうすべきだと思うか」と私に相談した。もちろん、何人にも相談したのだと思う。
私は、あらかじめ相談を受けることがわかっていて、私が信頼していた斎藤健氏、村井英樹氏などと話し合い、この両氏をキーパーソンにしたプロジェクトチームをつくることを考えた。そして、そのことを安倍首相に提案すると、積極的に受け入れたのである。
当時、経済再生相だった西村康稔氏を筆頭に、経済産業省、財務省、厚生労働省などの公務員9人、エコノミスト、経営者などによるプロジェクトチームを発足させ、日本の産業構造、そして日本的経営を抜本的に改革することにした。
もっとも、安倍首相は途中で体調を崩して辞任したが、プロジェクトチームはそのまま進め、20年の9月末日には、時の経団連会長、トヨタ副会長、パナソニック副社長やNTT社長などの経営者たちが、この構想を実現させようではないか、ということになった。
そして21年の春、新首相の菅義偉氏に、このプロジェクトの構想を実現させようと提言した。