ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、中森明菜さんについて。
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1982年のデビューから今年で40年の中森明菜さん。2017年の年末にディナーショーを開催して以降、約5年にわたり表立った活動をしていない彼女が、先月30日に突如ツイッターアカウントを開設し、近影と見られる写真とメッセージを投稿し話題になっています。
明菜さん、相変わらずの揺さぶり上手です。いわゆるその辺の「かまってちゃん」とは一線を画す、動物的本能に基づく嗅覚で動いている人なのだと思います。それが吉と出る時とそうでもない時がありますが、ファン心理や世間の耳目をこれほどまでに掻き乱し続けるのは、まさにこの人ならではの才能でしょう。
40年、彼女のファンである私もさすがに此度のツイッター開設には動揺しました。「中森明菜ツイッター開設」という事実に思いを馳せれば馳せるほど、理解と整理に苦しむ自分が制御できず、案の定何も知らずにいたマツコ・デラックスへ電話をし、互いに気が鎮まるまで3時間以上を要した次第です。何もこれで明菜さんが再始動をするとか、バカのひとつ覚えのように繰り返されている「紅白出場」とか、そんなものはむしろどうでも良く、何よりも「中森明菜が2022年の文明の中に生きている」ことが最大の衝撃でした。
以前から、明菜さんは「携帯は持たない」「現金を持ち歩かない」、だけど「いざという時のためにテレホンカードだけは持っている」と公言するぐらい、2000年代以降のデジタル化から取り残された人というのが私の中のイメージです。そしてそれは私にとって「中森明菜の特異性」を実感するための大きな手がかりでもあります。