落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「Z世代」。
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世の中は我々を生まれ年で区分けして、妙な名前をつけたがる。「しらけ世代」「ゆとり世代」「さとり世代」なんて。「オラァーしらけてねぇ、ゆとりもねぇ、それほど悟ったわけでもねぇ!」という人(何故か東北訛り)にしてみれば迷惑な話。それにしても一体誰が世代名を考えているのか? 銀縁メガネにループタイの老学者が集まって決めたような、一様に垢抜けない響き。責任者、出てこい。
人名を冠する世代もあるよね。例えば「松坂世代」。ある男性が「私、松坂世代なんですよ」と話しかけてきた。知らんわい。野球選手がそう呼称されるのはわかるが、お前は一般人だろうが。松坂さんだってそこまで流用されたらいい気持ちしないはず。他の人で括ったらどうだろう。同世代にいい国際政治学者がいた。『三浦(瑠麗)世代』はどう?三浦さんなら喜んで使わせてくれそうだもの(想像)。そうなると朝青龍も星野源も広末涼子もチェ・ホンマンも熊切あさ美もみーんな、まとめてジェネレーション-M(三浦瑠麗)!……とまぁ、今回のお題については私よくわからないので、冒頭からこんな調子ですいません。
さて、気を取り直して『Z世代』です。1990年代後半から2010年生まれの「生まれた時点でネット環境が整っていたデジタルネイティブな」世代を言うらしい。X世代→Y世代→Z世代と下っていくんだって。ちなみに1978年生まれの私はギリギリX世代(1965~1980年ごろの生まれ)。ん? 57歳と私(44歳)が同世代? 幅広過ぎやしないか、XYZ。第一、今までそんなこと誰からも言われたことがなかったけどな。どういうことだ、責任者!?
『氷河期世代』と言われた記憶はある。大学4年の頃、周りの人間はみな紫色のくちびるで青白い顔。擦り切れたリクルートスーツを身にまとって、無駄になったエントリーシートを燃やし暖をとっていた(誇張)。私はそれを横目に寄席に通ってポカポカとモラトリアムを満喫していたのだ。『ロスジェネ』とも言うらしい。失われた世代。失礼な名前だが、「少年期から青年期にかけて『ロス疑惑』と『ジョンベネちゃん事件』をやたらワイドショーで観せられた」世代……みたいな響きでもある。まぁ、だいたい合っているので、その解釈なら納得しよう。