イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 そして、自民党の派閥の力学で、岸首相は辞任させられた。

 もう一例、わかりやすいのが田中角栄首相のケースである。

 田中首相はそのエネルギーと金力によって、本命と言われていた福田赳夫を打ち破って首相に就任し、絶大なる影響力を持った。自民党も野党も、そして官僚たちもメディアも、田中首相が意のままに動かしているように思えた。

 だが、第4次中東戦争が起きて、石油を中心に、日本が悪性インフレに包まれた。すると、改めて田中首相の金権政治に対する批判が高まり、福田、三木武夫などは閣僚を辞任して、公然と田中批判をぶち上げた。自民党内で「田中首相辞めるべし」の声が圧倒的になり、ついに田中首相は辞任せざるを得なくなったのである。

 その後、小選挙区制になって、執行部の公認が選挙での当選に不可欠となった。安倍内閣では議員の誰もが首相のイエスマンになり、政権に対して党内からまったく批判が出なくなってしまった。

 今度は日本の政治に緊張感がなくなってしまったのである。

 そうした中で著しく支持率が低下した岸田首相はどうすべきなのか。何ができるのか。国民の支持がないまま内閣を持続させるつもりなのか。自民党も腐りきってしまった今、日本の政治は腐りきってしまうのではないか。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2022年10月7日号

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