
今回の映画のアイデアは、16年にNHKの「クローズアップ現代」で取り上げた無縁仏の特集「あなたの遺骨はどこへ~広がる“ゼロ葬”の衝撃~」が起点になった。たまたま目にしたドキュメンタリーが心に残ることもあれば、新聞の読者からの投稿欄も好きで、よく目を通す。日常のささやかなドラマを見逃さない観察眼はさすがだが、「子どもの頃、お話を作ることが好きだったりしましたか?」と聞くと、「14歳まで、お人形で遊んでました」という意外な答えが返ってきた。
「『こえだちゃんの木のおうち』っていうお人形遊びのセットがあって、一人で黙々と遊んでいたんです。そうしたら、その一人遊びを兄に発見されてしまって、兄が母に『あの年で、お人形遊びに夢中なのはおかしい』みたいなことを言っていたのを耳にして、それからお人形遊びをやめました。もったいないことをしましたよね。そのまま遊ばせてくれたら、もっと違うイマジネーションが生まれたかもしれないのに(笑)」
(菊地陽子、構成/長沢明)
※週刊朝日 2022年9月23・30日合併号より抜粋