ホームレスの人々に配る食料を準備する支援団体のメンバー=2021年10月、仙台市青葉区
ホームレスの人々に配る食料を準備する支援団体のメンバー=2021年10月、仙台市青葉区

■負のトライアングル

 ホームレス状態からの脱出が難しい要因に、「負のトライアングル」があります。「仕事」と「貯金」と「住まい」、この三つはそれぞれ相関しているため、一度失うとどれか一つを手に入れようとしても、他の二つを持っていないと難しいので自力では抜け出せなくなります。この「路上脱出を拒む高い壁」をどんな人でも乗り越えられるようにするのが、私たちのソリューション(解決策)です。

 これまでは、就労支援を兼ねたシェアサイクルサービスや、原則2週間まで無料で泊まれる個室のシェルターなどの事業を通し問題解決に取り組んできました。今後の目標として、民間でつくる新しいセーフティーネット(安全網)を構築したいと考えています。

 今まで私たちは、生活困窮者の緊急的な支援に重きを置いてきました。所持金が10円しかないという人には、生活保護につなぐまでの収入を得るため、シェアサイクルサービスのような日払いでできる雇用の創出を行ってきました。しかし若い相談者が増えてくる中、安定的な就労を目指した中長期的なサポートが必要だと実感しています。

「貧困の再生産」と言われますが、例えば、生活保護を利用するようになると、すぐに仕事を見つけてくださいと行政から言われます。だけど、簡単に見つかる仕事は労働環境が劣悪なことが多く、すぐ辞めることになり、再び困窮状態に陥ります。そうした貧困の再生産が増えています。重要なのは、中長期的な視点に立って、職業訓練的な期間も含め、長く続けられる仕事をいかにサポートできるかです。

 あらゆることが不確実になった現代では、誰もがふとした瞬間に転落してしまう可能性を持っています。もしそうなっても、再挑戦が簡単にできるセーフティーネットがあれば、日本社会全体にも活力をもたらすに違いありません。それが、私が考える「縮む日本」の処方箋です。

(構成/編集部・野村昌二)

AERA 2022年9月19日号

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