■失敗は悪ではない

井上:最近、気になるのは、一般の方たちが過度に「噛むこと」を恐れてるのではないかということです。「スムーズに話さないと笑われる、失敗した」と感じるのかもしれません。でも、失敗は悪いことではないんです。石橋を叩いて渡るのもいいのですが、それだと成長できないじゃないですか。ミスは怖いけれど、絶対になくすことはできません。だったら、面白がったほうがいいと思うんです。

秀島:そう伺うと、すごくほっとします。ニュースを正確な発声で淀みなく伝えなければならないアナウンサーさんでも、失敗に対してそういう意識をお持ちなら、私たちがつっかえたり、間違えたりしながら話してもいいのだと気持ちが楽になります。

井上:美しい話し方イコール好感度ではないんですよね。それに、「自分の持ち味はコレしかない」と思い込むと、通用しなかったときに落ち込んでしまう。

秀島:自分の放送を聴くと反省点はたくさんあるんです。でも、いきなりは成長できません。私は放送後、「こう言えばよかった」と、改善点のプランをいくつか考えながら、気になったことをメモに書き出しています。

井上:私は携帯のメモに打ち込んでいます。気づいたら、すぐに残しておきたいので。今も忘れられない失敗はたくさんありますし、それをエンジンにして成長していかないと。

秀島:私もお焚き上げのような気持ちです。そのままにすると、ずっと悶々としますし、失敗損。振り返っておくと、必ず次の機会に生きてくるんです。

■日頃の努力で上達する

井上:秀島さんが著書で、季節の移り変わりを感じたときに、数珠つなぎで連想していく、と書かれていたことは、すごく勉強になりました。アナウンサーの研修でも、歩きながら見た光景を言葉で表現する訓練はするんです。でも、そこからイメージをふくらませ、言葉を考えていくのは、話題を豊かにするのに役立ちますね。

秀島:テレビ番組で芸人さんが一言で笑いをとる瞬発力も、日頃の努力の賜物だと思います。

井上:普段からテレビを観たり、ラジオを聴いて笑ったときに、「今、なぜ笑ったのかな」「どこが面白かったのかな」と逆算して考えると、「この一言が効いてたのか」と理由がわかったりしますよね。私は、その会話の流れや決めの一言を真似してみることもあります。

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