東京西部を一直線に走る中央線に1922年、高円寺・阿佐ケ谷・西荻窪の3駅が誕生した。それから100年。駅周辺には“中央線文化”と呼ばれる独特の雰囲気が醸成されてきた。その魅力を探る三駅物語最終回。作家の角田光代さんが、西荻窪の好きな店について寄稿した。
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西荻は、町の規模がそう大きくなく、商店街が充実しているところが私には魅力です。フランチャイズの店よりも個人店が多く、対応がマニュアル化しておらず、人間的なのもほっとします。飲食店、雑貨屋さん、古本屋さん、アンティークショップ等々、ちいさなお店が多いけれど、一軒ずつに個性と表情があります。
・とらやさん(コロッケ、ポテトサラダ)
お総菜の種類が多く、どれもおいしいので、三十年近く通っています。オーソドックスでクリーミーなポテトサラダ、こしょうのきいたコロッケはとくに好きです。
・千鳥
縄のれんに赤提灯、コの字のカウンターの風情がとても好きです。味のしみこんだおでんを選ぶのもたのしいです。混んでいても不思議としずかなので、本を読みながら飲むのにとてもいいです。
・戎
旅行をしたあとに、西荻のホームに降り立つと戎さんの焼き鳥の匂いがして、ああ帰ってきたなと思います。メニュウの品数が豊富で、小皿が多いのでひとり飲みに最適。安いし早いしおいしい。
・コノコネコノコ
旬の食材を使った創作料理は何を食べても本当においしい。猫のポスターやインテリアが多いのですが、お皿に醤油を入れて、猫が浮かび上がったときは感動で震えました。
■静かに飲むならおでんの美味い居酒屋で
千鳥
東京都杉並区西荻南3-10-2/営業時間:17:00~21:30L.O./定休日:日、第1土、祝(営業する日もあり)/入店は1組3人まで
名物のおでん以外にも、酒好き向けの料理がそろう。1955年に創業。初代店主は84歳まで働き続けて、2005年に従業員に店を譲った。2代目は初代の味を守りつつも、少しずつ料理や酒を加えてきた。燗銅壺でつけた白鶴を飲むもよし、ピルスナーウルケルを飲むもよし