毎年お詣りするたびに、敷地内に新たな建物が増える超好景気なこの神社。今度は境内に巨大な岩が置いてありました。頭にしめ縄が巻かれ、『厄』と赤字で彫ってある。その名も「厄災落としの割石」。厄玉という素焼きのピンポン球のような物を、この岩に叩きつけて厄を祓うらしい。岩に向かう道に敷石が等間隔に並べてあります。「敷石をケンケンパで進んで、エイッと叫んで叩きつけてください!」と説明を受けました。『ケンケンパ』で!? 『エイッ』と叫んで!? 叩きつけるっ!?
岩には、厄玉の粉砕した跡が真っ白に残っています。「ケンケンパ! エイッ!」。スパーンッ!! いい音が響くなぁ。なかにはケンケンパも掛け声もスローイングも厳しそうな高齢者がヨタヨタしながら厄払いに興じています。しかも札には……「厄玉200円」!! 神様! あーた、そら、つれなかろうぜ。でも……やりましたよ。やるでしょ、そりゃ。結論。メチャクチャ楽しいじゃないですか、神様!!
帰りに屋台でたこ焼きまで買って大散財。たこ焼きは8個入りで600円だから、1個75円。厄玉1個200円……神様、今年は何卒よろしくお願い致します。
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめたエッセー集の第1弾『いちのすけのまくら』(朝日文庫、850円)が絶賛発売中。ぜひ!
※週刊朝日 2023年1月27日号