
物価高なのに給与が上がらない中、「年収200万円」が話題となった。特に深刻なのが母子世帯で、生活困窮者を支える活動が各地で懸命に続く。国に求められる対策を専門家に聞いた。AERA 2022年8月29日号の記事から紹介する。
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貧困対策として重要性が増しているのが、生活困窮者を支える活動だ。
7月18日、東京都練馬区。「練馬あったかフードバンク」が開いた配布会には予約した人が次々と訪れた。
「一番助かるのは紙オムツです。買うと千円はしますから」
小学1年の息子(6)と暮らすシングルマザー(33)は、受け取った配給品を手に笑顔を見せた。
コロナ禍でアルバイト先が倒産。飲食店でのバイトを見つけたが、店の都合で勤務は週2日だけ。収入は月3万円程度にすぎない。実家で暮らし、児童扶養手当を月5万円近くもらっているとはいえ、生活はカツカツ。そんなとき、スマホで見つけたのが練馬あったかフードバンクだった。
毎回足を運び、この日は紙オムツのほか、野菜、パスタの麺、ホットケーキの粉、醤油、マスクなどを受け取った。この女性は言う。
「洋服や化粧品もいただいていて、配布は本当に助かります」
同フードバンクが立ち上がったのは20年12月。コロナ禍で生活困窮者が増えていると聞いた区内在住の有志の女性8人が立ち上げた。配布会はこの日で11回目。毎回約130人分を用意するが、予約枠はすぐ埋まる。利用者の55%が50歳未満で、7割が女性だ。実行委員会事務局長の鳴海加代子さんは、こう話す。
「社会保障制度の不備など、本来は政治の貧困です。しかし、困ったときはお互い様。私たちにできることをやっていきたい」
貧困家庭の子どもの学習支援をする認定NPO法人「キッズドア」は昨年、「わたしみらいプロジェクト」という親の就労支援をスタートさせた。理事長の渡辺由美子さんは言う。
「生活が苦しいのは、働いているのに十分な賃金を得られないからです。その状態から抜け出すにはより高い賃金を得られる職場で働くことですが、国の就労支援は学校に通うにしても本人の負担額が多く、時間的な制約もあるなど支援が届いていません」