チェンナイのIT企業で約3年間、日本語講師を務めた。教室での雑談も学びが多かったという。最後の授業の日、教え子たちと(photo/石井遊佳さん提供)
チェンナイのIT企業で約3年間、日本語講師を務めた。教室での雑談も学びが多かったという。最後の授業の日、教え子たちと(photo/石井遊佳さん提供)

 バラナシとチェンナイを並べてみるとき、「違う惑星だ」ぐらいのショックがあります。それは、国土が広く、気候や文化に地域差があるというレベルの話ではありません。インドは、その中にいくつもの惑星があって、それぞれ根本的に違い、一般化は無理。その魅力は自分で行って、自分の目で見てください、としか言いようがありません。

 夫は、サンスクリット語に底知れぬ興味を覚え一生を捧げているという点では「インド沼」にはまっているとも言えますが、私はインドファンでも専門家でもありません。インドを題材とした過去の作品の多くが、インドを幻想化していると感じます。『百年泥』はインドに何の肩入れもせず、中立的スタンスで書きました。

 けれど、私の人生が、インドとの出会いで激変したことに間違いはありません。やはりこれも一種の「インド沼」でしょうか。私はそんなものにはまっていない、そう思い込ませるところが「インド沼」の「インド沼」たるゆえんかもしれません。(編集部・古田真梨子)

AERA 2022年8月29日号

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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