鴻巣:林さんの翻訳者は何という方なんですか。
林:私? 誰もいない。訳されてないもん。イタリア語とフランス語の短編がちょっとあるだけで、外国人に愛されないかわいそうな作家なの、私(笑)。
鴻巣:『白蓮れんれん』(1994年)なんか、もうとっくに訳されてると思ってましたけど。
林:ぜんぜん。なんか翻訳がすごく難しいらしくて。3年前、桐野夏生さんと角田光代さんと一緒に作家会議でパリに行ったんですけど、お二人はあちらでも訳されていて、桐野さんなんか「あしたから僕が車で案内します!」みたいな若い人がついてるわけ。桐野さん美しいし。「いいなあ、やっぱり翻訳者に愛されなきゃダメなのね」って思いましたよ(笑)。
鴻巣:翻訳者って、そういう献身的な人が多いんですよ(笑)。
林:いいんです、私はアジアの端っこの作家で終わるから(笑)。きょうは鴻巣さんとゆっくりお話しできてうれしかったです。
(構成/本誌・唐澤俊介 編集協力/一木俊雄)
※週刊朝日 2022年9月2日号より抜粋