林:演歌歌手の弟子入りみたいじゃないですか(笑)。

鴻巣:先生が銀座で編集者とおすし屋で食べたり飲んだりしてるところに呼ばれたりするんですよ(笑)。先生は先生で、編集者がいるところに私を呼んで紹介をして、コネクションをつくってくれようとしていたと思うんですね。

林:やさしい先生じゃないですか。最初にご自分の名前で本が出たのは何ですか。

鴻巣:大学院の2年目、23歳のときにイギリスのBBC放送がやった旅番組のエッセー集ですね。

林:自分は憑依型だとおっしゃっていますけど、いちばん憑依できる作家って誰ですか。

鴻巣:『侍女の物語』という小説で有名なマーガレット・アトウッドです。彼女の文章はわりと入りやすいですね。

林:『侍女の物語』って難しくて、私、途中でやめちゃった。

鴻巣:続編の『誓願』はめちゃくちゃ読みやすいですよ。って、私が訳してるんですけど(笑)。それと、いますごく気持ちがシンクロするのが、アマンダ・ゴーマンというアメリカの若い詩人。

林:バイデン大統領の就任式のときに詩を朗読した黒人の若い女性ですね。鴻巣さんがこの詩を訳した本(『わたしたちの登る丘』)を、私、読みました。哲学のような言葉がずっと並んでましたけど、ああいう詩を翻訳するって難しいだろうなと思いましたよ。

鴻巣:小説だと少し説明的に訳せるんですけど、長々説明してたら詩にならなくなってしまうので、難しいですね、詩は。

林:テニスの大坂なおみさんが、この本に賛辞のメッセージを寄せてくれたんですね。

鴻巣:お互いをリスペクトし合ってるみたいです。同じ若いアフリカ系の女性で、女性であるからたたかれるという経験もあったみたいで、そういう点で連帯感があるのかなと思います。

林:このごろの日本文学の若い人、すごくおもしろいから、私はついそっちから読んでしまいますけど、きょう鴻巣さんのお話を聞いて、海外文学をもっと読まなきゃいけないなと思いました。世界が広がらないから。

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