
松任谷:私が東京ど真ん中生まれじゃないことが、自分の音楽を形成してると思ってる。少し外から見た東京の華やかさに憧れて、今でもその気持ちのまま生息してるという感じかな。
林:私、この本を読んですごいことがわかったんですよ。ユーミンのお母さんと私の母は、同じ学校を出てるんです。
松任谷:えっ、ほんとに?
林:いま私が勤務してる日大の本部(市ケ谷)の裏に東京家政学院(現・東京家政学院大学)があるんだけど、お母さま、あそこを卒業してるんですよね。うちの母もなんです。私の母は6年前に101歳で亡くなりましたけど。
松任谷:林さんにしろ私にしろ、母親の代がどう生きたかということが、色濃く反映されてるね。リベラルでしょ。
林:リベラル。あそこは贅沢な学校で、『源氏物語』の研究で第一人者だった池田亀鑑先生が教えてたし、創立者の大江スミ先生は、留学先のイギリスから帰ってきた後、理想的な女子専門学校をつくろうとして、山梨の女学校に先生のスカウトに行ったみたい。それであの辺のお金持ちのおばあさんたちに家政学院を出てた人が多いんです。ユーミンは八王子だから、中央本線で山梨とつながるんですよ。
松任谷:そうそう、中央本線で3駅違いだけ。林さんのところと。
林:その3駅が50分ぐらいかかるんだけどね(笑)。女学校に行く人も少なかったときに、卒業した後、東京の3年のそういう学校に行かせようと思った中央本線のリベラルなうちがあって、そこにうちの母親も通い、数年後にユーミンのお母さまも通ったということがこの本を読んでわかったんです。私、すごく感動しちゃった。
松任谷:すごいね。家政学院の物語ができるね。(津田塾大創始者の)津田梅子ばっかりじゃないよ(笑)。
林:前に一緒に八王子の家の前を通ったときに、「あれが私が夜中に抜け出して遊びに行った外階段」って教えてくれましたよね。
松任谷:あそこは、林さんと通ったときのまま廃屋になってるんですよ。今回、「YUMING MUSEUM」というのをやるので、あの廃屋にガサ入れに行ったら、昔のものがそのまま出てきた。
林:私はその展覧会まだ行ってないんですけど、“夜抜け”用のカツラも展示してあるんでしょう?
松任谷:そう。昔、“夜抜け”して遊びに行くときに、枕の上に置いて偽装してたカツラね。あれはいまだに使っていて、ゴーフルの缶に入れてとってある。「荒井呉服店」でそういうウィッグとかも扱ってたの。
林:へぇ~、そうなんだ。絶対見に行かなきゃ。
(構成/本誌・唐澤俊介 編集協力/一木俊雄)
※週刊朝日 2023年1月27日号より抜粋