岸本聡子・杉並区長(撮影・松岡瑛理)
岸本聡子・杉並区長(撮影・松岡瑛理)

「学生時代に、週刊朝日でバイトしたことがあったんですよ。まだ携帯がない時代で、何かあった時に記者のポケベルを鳴らして呼び出す仕事をしていたんです。懐かしいな」

【写真】「誰にでも門戸は開かれています」と話す岸本さん

 気さくな笑みを浮かべて話すのは、2022年6月に東京都杉並区長選で初当選した岸本聡子さん(47)だ。大学卒業後、オランダとベルギーで約20年暮らし、国際シンクタンクの職員として公共政策の研究に携わった。区長選への出馬を表明したのは今年4月。区内に移り住んだのも同月だ。行政職や議員の経験もなく、一見無謀に見える挑戦。だが、支援者らと繰り広げた草の根の選挙活動が注目を集め、投票日前日にはその氏名がTwitterでトレンド入りするほどの話題に。最終的に現職の区長をわずか187票差で破り、接戦を制した。

 たとえ区民であっても、区議選挙に出たり、ましてや区長に立候補する発想は浮かびづらいものだ。「区長って、誰でもなれるんでしょうか?」そんな記者の素朴な問いかけも、軽んじることなくまっすぐに答える。

「25歳以上であれば、誰でもなれますよ。私自身、選挙に出る前は公職選挙法も読んだことがありませんでした。選挙上の細かいルールを学ぶ必要はありますし、『供託金』という預け金も必要になってきます。でも、それはどちらかといえばテクニカルな話。選挙を通して実現したいことが明確であれば、誰にでも門戸は開かれています」

 岸本さんの「区長への道」は、いかにして開かれたのだろうか。

 東京都大田区に生まれ、大学時代までを横浜市で過ごした。日本大学文理学部に入学すると、環境NGO「A SEED JAPAN」に入り、若者たちによる地球温暖化防止キャンペーンなどに邁進する。4年時に代表に就任し、卒業後はそのまま、団体の専従スタッフとなった。当時から政治への関心は高かったのだろうか。

「いえいえ、それはもっともっと後の話です。環境運動にも生物多様性、気候変動、オゾン層と色んなテーマがあって、提言をしたりイベントを開いたりと、『運動』というよりサークル活動に近い感覚でした。みんなで一つの事を成し遂げることが楽しくて、会社に入ることも全然考えられなくて。今思えば、行政職を目指す道もあったと思いますが、そんな計画性もなかったです」

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移住したオランダで感じた限界