■補償運転という選択肢

 一方、同乗観察で「まだ運転を続けても大丈夫そう」と判断した場合はどうするか。

 やがてくる返納の時まで安全運転を続けてもらうため、「補償運転」を勧めるのも手だ。補償運転とは、加齢などに伴う運転技能の低下を「補う」運転を意味する。

「補償運転の目的は、高齢ドライバーが苦手とするような場面で運転しないようにすること。例えば雨の日や長距離、行ったことのない場所への運転を避けるといった方法があります」

 いつも行っているスーパーや田畑に行くときだけ、安全な道を選んで運転する、など状況に合わせて話し合うのがいい。

 AERAが実施したアンケートでは、免許返納によって親が「ふさぎ込んでしまって不健康になりそう」と心配する声や、「返納してから認知症が悪化した。返納を促したのがよかったのか悪かったのか」と後悔する声も聞かれた。

「仮に強制的に車を取り上げて事故の心配がなくなったとしても、親御さんの人生はそれで終わりではありません。車に代わる生きがいを一緒に探してあげることもまた大切なサポートです」(志堂寺さん)

(編集部・高橋有紀)

■「同乗観察」のチェックポイント22

□車にこすったようなキズはついていないか
□車が汚れたままになっていないか
□鍵の置き場所を忘れていないか
□急ブレーキや急加速が増えていないか
□まっすぐ走れずにふらついていないか
□車の流れにスムーズに乗れているか
□一時停止は停止線手前で止まれているか
□近づいてから変わる信号に気づけているか
□信号のない見通しの悪い交差点で左右確認が充分できているか
□右左折や車線変更のウィンカーを忘れてないか
□他車からクラクションを鳴らされていないか
□左折の際に巻き込み確認ができているか
□右折の際に右奥からの歩行者を確認できているか
□曲がる際にハンドルを手荒に操作していないか
□反対車線を走りそうになっていないか
□バックでの駐車に苦労していないか
□駐車枠内へ入れるのに何度も切り返してないか
□駐車枠の中央に止められているか
□目的地や道順を忘れたりしていないか
□道路標識の意味を忘れているようすはないか
□乗っていて車酔いしなかったか
□ヒヤリ、ハッとすることはなかったか

※『大切な親に、これなら「決心」させられる! 免許返納セラピー』(志堂寺和則・著、講談社・刊)

※AERA 2022年8月15-22日合併号